3)全面委託と一部委託
マンション管理の一切を管理会社に委託する方式を全面委託、定期清掃や法定点検など業務によっては専門業者と直接契約を結び、管理業務の一部を管理会社に委託する方式を一部委託と言います。
新築マンションの管理方式はほぼ全てが全面委託であり、全体でも70%ものマンションで全面委託方式がとられています。
全面委託は、管理組合理事の手間や負担が少ないことや、管理会社による効率的な管理が期待できるというメリットがある反面、管理委託費が高くつくことや、管理組合による自主的な管理意識が低下するというデメリットがあります。
一部委託は、管理組合が直接できることは管理組合がおこない、専門業者に直接委託できるところは専門業者に、残りは管理会社に委託します。
一部委託のメリットは、全面委託に比べると管理費を全体的に低減できる点と管理組合の管理意識が高まる点で、管理組合の負担が増えるところがデメリットです。
また、管理会社を利用せず、管理組合および直接契約した専門業者だけで管理の全てをおこなう自主管理という方法もありますが、これは全区分所有者の高い管理意識が前提の上、管理レベルがその期間の理事会や理事長の能力などに大きく左右されてしまうため、現在のところ少数派に留まっています。
なお、全面委託といっても管理会社が全ての業務を直接おこなうわけではなく、管理会社が管理業務を一括で受注した後、清掃や点検など個別の業務をそれぞれの専門業者に下請けに出しているのが実情です。
これを再委託と呼んでいます。
事務管理業務を除いた業務は、再委託することが法律で認められていますが、再委託には、管理会社にとって都合のいい業者が委託先として選ばれる、管理会社への中間手数料(マージン)が発生するため、その分管理委託費が高くなるという問題があります。
管理組合は、管理会社に対し再委託した業務内容や業者についての説明をきちんと求めるべきです。
管理委託業務は、大きく事務管理業務、管理員業務、清掃業務、建物設備管理業務の4つに分けられます。
事務管理業務には、基幹事務(管理組合の会計の収入および支出の調査、出納《原則方式による場合》、マンションの維持または修繕に関する企画または実施の調査)と基幹以外の事務管理業務(理事会支援業務、総会支援業務、その他)があり、その内基幹事務については再委託が禁止されています。
管理員業務は、受付等の業務、点検業務、立会業務、報告連絡業務の4つが主な業務です。
最近では管理員の住み込みによる常駐は減っており、日勤(通勤)や巡回(1人の管理員が複数のマンション業務を掛け持つ)が増えています。
清掃業務には日常清掃と特別清掃(定期清掃)があります。
日常清掃は管理員や管理会社の清掃員が基本的に毎日おこなう掃除のことで、月に一度か数ヶ月に一度清掃専門業者が来て、共用廊下や階段、エレベーターホールなどを機械洗浄したりワックス掛けするのが特別清掃です。
建物設備管理業務は、建物、エレベーター、給水設備、浄化槽、消防用設備、機械式駐車場などを定期的に点検しメンテナンスをおこないます。
全面委託は、上の4つの管理業務を管理会社が一括して受注する方式ですが、この中で特別清掃(定期清掃)と建物設備管理業務については、信頼できる業者があれば見積りをとって、直接管理組合と契約する分離発注(一部委託)を検討してみるべきだと思います。
そのほうが全面委託よりも管理費用を圧縮できる可能性が高いからです。
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